大学からの帰り道、駅に向かっていたら、路上ライブをする人のせいで、人だかりが出来ていた。

「きゃー!レン様ぁ!カッコイイ!」

「「こっち見てぇ!」」

「うるせぇ……」

バンドの楽しみ方は人それぞれだよね、とは思うのだが、折角いい音でやってるんだからもっと音に目を向けてあげて欲しい。

少なくとも、この子達の近くだとまともに演奏聴けないのよね。

別に興味があるわけでもないし、そのまま帰ろうかなと思っていたところ、ちょうど演奏が終わって聴いていた人が拍手を始めた。

空が割れるのではないかと思うほど大きな音に驚きつつ、顔だけじゃなくて実力もちゃんとあるんだな、なんてちょっと興味を惹かれたので、静かに聴ける場所を探す。

『みんなありがとー!じゃあ次の曲、今日ラストの曲いくけど……その前に、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだ』

良さそうな場所を見つけたタイミングで、ボーカルのMCが始まる。よく見るとネットで見たことのある顔だ。バンドの名前は確か……

『俺たちブルーダイキュリーは、正式にメジャーデビューすることになりました!!』

「「「おおおおお!!」」」

また盛大な拍手が鳴り響く。たまたまとはいえ発表の場に立ち会ってしまった私も、一応周りに合わせて手を打ち鳴らした。

『それでメジャー最初のCDに入れようと思って作った曲、これは俺が始めて作曲して、いつも曲作ってくれてるベースのハルに編曲してもらったやつなんだけど、応援してくれてるみんなに先に聴いてもらいたくて、頑張って使用許可取ってきちゃいました!』

そっか、メジャーデビューするってことは契約やらなんやらで勝手にできないのか。ポピパの曲も、いずれはそうなっちゃうのかな。

と、親友たちの顔を思い出していたのもつかの間、演奏が始まってすぐに、現実に戻った私はボーカル、レンを睨みつけた。

何故かって?

その曲は私が作って、りみに渡した曲だったから。

そんなはずはないと否定したくても、否定しきれないほどにコード進行が同じ。

たまたまだと思いたくても、いちいち私の入れた”遊び”が耳を、そして脳を刺してきた。

「ありえねぇ……!」

ふつふつと沸く怒りを抑えて、地獄のような時間が過ぎるのを待った。

香澄やみんなに、恥ずいけど感謝を伝えたいと思って作った曲を、どう手に入れたかわからないけど、自分たちの曲として発表しやがって。

絶対許さねぇ!

鳴り止まない拍手と賞賛を浴びるボーカルの顔を焼き付けて、私はひとまず駅の構内で撤収の様子を伺う。

いつもなら柱にもたれていると脳みそまで海綿体で出来ているような軽薄な野郎どもに声をかけられているところだが、よほど怒りが顔に出ているのか、それとも爪がくい込むほどに強く拳を握っているからか、方向転換して近付きもしない。

そうか、常にこうしておけば声をかけられないんだな、まぁどうでもいいんだけど。

機材を車に積み込み終わり、そのまま車に乗り込もうとする彼らを見て、私も行動を開始する。

幸い駅前にはタクシーがいっぱい止まっていたので、にこやかにマネージャーを名乗って彼らの車を追いかけた。