これはMCD時代の、とある潜伏捜査の時の話だった。

‥‥彼女が業務執行委員になる前の話でもある、とある一つの内緒話で、その日は部下と彼女が一緒に潜伏捜査に出ていた。

「簓、わて‥‥どないしよう‥‥。」

―――――助けて。

びちゃびちゃと卑屈な音が電話口から聞こえる荒い息と水音。…多分そんなに性欲が強くない彼女が催眠効果と同時に淫乱になる違法マイクでも食らったのだろう。このH歴なんでもあるんやねって思ったらため息しか出なかった。だが横にいる男数人が「くはは!早く白膠木簓を呼べよ!」って言っている声を聴いた瞬間全身の神経が切れそうになった。

「っ…おい、お前今どこやねんつっ…!」

いや‥‥もう切れている。だからこそ気をつけろとあれほど注意したはずにも限らず「大丈夫!まさかそんなマイク持ってるとかありえないやん!」ってことでマイクを持って行かずに出たのも大きな誤算だったのだ。‥‥後で説教を聞かすつもりで彼女のアイフォンのGPSで位置を調べたらそんなに離れてない路地裏だったので、左馬刻に言って一緒に行くか、否かを判断するには十分秒数だった。

横で聞いてた左馬刻もため息しか出ないかんじなのか、怒りを感じては利き手を鳴らしていた。そもそも一緒に連れて行った部下がへなちょこすぎたのだから自分の失敗でもあったが…重要なのはそこではない。

「早くいくぞ、もっと酷いことになる前になぁ」
「…左馬刻、顔ワイより怖いで?」
「ったりーめーだ」

そう、すべては自分の失態が呼んだことだった。怒鳴ってもマイクを持って行かせば部下も‥‥‥自分が片思いしている女もこんな目に合わなかったはずだった。あぁ、なんと機嫌がいいのだろう。彼より「機嫌がいい」人はいないだろう。だからこそ簓は彼の逆鱗に触れないよにしつつ碧棺左馬刻の後をついて行った。一言ひっそり見ているあなたに向けながらだ。

「こいつの片思いは俺の彼女やけど…でも運‥‥、悪かったなぁ?」

にぃ、そう笑った浅葱色のショートヘアーの男性も「断然機嫌がいい」ように見えた。