ちゃぽんと湯の音。白く濁る水面に水滴が落ち、波紋が広がる。
温かい湯の中に身を沈めていると体がぽかぽかしてきて、ほうと息をついた。
浴槽は広く、古き良き日本を感じさせる木造の壁と床であり、一面は開けていて美しい景色が楽しめる露天風呂である。湯の温かさとは裏腹に、時折吹く風が清々しくひんやりしていて、火照った体に浴びるとひどく心地いい。
鮮やかな赤や黄色に彩られた野山を眺めて、岸波白野はこれ以上ないほどの幸福を覚えていた。
風呂や景色の心地よさとは裏腹に、先程から天を向いて反り返った肉棒がむぎゅっと柔らかく大きな乳房に挟まれていて、湯に濡れて滑りが良い状態で、ずりずりと上下に擦られている。その気持ちよさで小さく声が漏れた。
タマモは頭にある狐の耳をぴこぴこ動かし、尻尾をふりふりして、満足そうな、上機嫌そうな顔で風呂の縁に座る彼の顔を見上げている。
奉仕をするのは好きだ。それが好きな相手のためであれば躊躇うことなどない。
大きな胸でぎゅっと彼のペニスを挟んで、射精へ導こうとパイズリしながらも、すぐにイカせるのではなく少しでも長く楽しんでもらおうと、刺激と休息を交互に与えていた。
「いかがですご主人様? 気持ちいいです、よね? とーってもかわいらしい顔してますよ」
気持ちいい、と白野が答える。普段と比べていくらか余裕が失われ、声を詰まらせている。
嬉しそうなタマモは敢えて焦らす。堪らなくなって今すぐにもっと気持ちよくしてやりたいと思いながらも、必死に我慢して、彼を射精させないのだ。
ぐにぐにと乳房で挟み込んだペニスを揉んで、白野が大きく息をつくと動きを変えた。
右手でペニスを握り、自らの乳首に亀頭を押し当てる。ぐりぐり擦りつけて新たな刺激を与えたことにより、白野の体がびくっと跳ねた。
タマモはますます笑みを深めて嬉しそうにする。
「まだだめですよー。我慢してくださいね。たくさん我慢してからぴゅっぴゅっした方が気持ちいいですからねー」
ぐにぐにと乳房が柔らかく動く。
再び挟まれて上下に擦り、徐々に追いつめられていき、白野は余裕を失っていった。
亀頭の割れ目から漏れ出したカウパーが彼女の胸に擦りつけられている。しかし白濁した湯に流されて判別などできるはずもない。
伸ばされたタマモの舌がぺろっと触れる。まるで漏れ出てくるそれを舐めとるように、舌先で亀頭を撫でられたことで、簡単に腰がびくっと跳ねた。
焦らすような動作を続けて、ひたすらに白野に我慢させたタマモだったが、白野が縋るように彼女の頭を撫で、まるで抗議するように耳にきゅっと触れると、きゃっと悲鳴を発して途端にとろけた表情になる。
見上げた白野の顔はすでに余裕がなく、目を潤ませてさえいて、心底惚れている彼女に言わせてみれば、非常に“そそる”顔だったわけだ。
「あぁぁ、そんな顔されると、私が我慢できませんよぉ……!」
今までよりも力を入れてぎゅうっと挟まれ、突然動きが大胆になった。
さっきと比べて明らかな違いを感じるほど速く乳房で扱かれ、舌先を亀頭の割れ目にぐりぐり押し込まれて、刺激が一気に強くなる。
いよいよとどめを刺しにきたのは明白だった。
白野は情けない声を漏らして、ぐっと腰を突きあげた。
「きゃんっ!」
びゅっと飛び出た精液が彼女の顔面に叩きつけるかのように当たって、どろりとして肌を撫でるように付着して垂れる。
タマモの顔はにんまりしていた。彼が射精した事実が嬉しくて仕方ない。射精の余韻に浸ってぐったりしている様子も、力が抜けているのだが目が合うと薄く笑みを浮かべる顔も、お礼を言うかのように頭を撫でてくれるのも愛らしくて堪らない。
垂れてきた精液をわずかに舌で舐めとって、タマモは声を弾ませた。
射精したばかりのペニスを胸で押し潰すように強く抱きついて、甘える素振りで彼の肌に頬をぴったりくっつけて微笑む。
「んふふ、出しちゃいましたね。でもぉ、まだまだできますよね?」
自らの体で押さえつけ、上を向いていたペニスの裏筋をぺろっと舐めて、白野が怯んだ様子で表情を歪めたのを見た。射精直後で敏感になっていて余裕がなさそうだ。
「私はご主人様が望むことを叶えて差し上げたいので、もちろんご主人様の意思に従うつもりではありますが、聞かなくてもわかるといいますか……」
指先で裏筋をつつつと撫でる。ペニスはぴくぴくしていた。そう時間をかけずにどんどん硬くなっていって、早くも臨戦態勢になる。
そうなった後で否定できるはずもない。白野は声を出さずに頷き、タマモは熱いため息を漏らした。
いそいそと動き出したタマモは勃起したペニスを握り、上下に擦り始める。
タマモが作りだした二人だけの空間。二人だけの世界。
ここに来てから毎日そうしていた。遊ぶように抱き合って、落ち着いて、精が尽き果てるまで何度となく体を重ねる。しかしタマモがすぐに呪術を用いて回復させ、誘惑してまたセックスするのだ。
そんなことばかり繰り返しているのだが、彼女は一向に飽きる様子がなく幸せそうで、白野もまたこんな日々に安堵していた。
色々と忘れていることがあるような気もするが、気にしてはいけない。タマモにそう言い聞かせられているし、彼自身もその方が幸せだと考えていたからだ。
「ご主人様はここが気持ちいいんですよねー……」
右手で扱きながら顔を寄せて、下からつつくようにしてカリの部分を舐め、唇を尖らせて吸いつき、ちゅうっと音を立てた。
白野は苦しげにも見える顔になり、歯を食いしばって耐えようとするが呼吸が乱れてしまう。はぁぁと力が抜ける息を吐き出して、ぴくぴくペニスが震える。
タマモはペニスを口に含み、じゅぽじゅぽ鳴らしながら頭を振る。唾液を塗りたくって舌を絡ませ、口をすぼめて強く吸いつく。
彼女のフェラチオはねちっこく、情熱的で、強弱を駆使して与える快感をコントロールしており、白野のためとは言いつつも時には焦らして、辛そうにも思える表情を確認して微笑んでいる。楽しくて仕方ないといった顔だ。
「んっ、じゅっ、ぐぷっ、んぷっ――」
卑猥な音を鳴らしながら熱心にペニスをしゃぶっている。
白野は愛おしそうに彼女の顔を見つめ、その表情を知っているタマモは奉仕しつつ、ふと目視で確認してぶるりと震えた。
「ぷはっ。こういうのはどうですか?」
そう言って湯の中から立ち上がったタマモは白野に背を向け、手を添えたペニスをぺたんと尻に押しつけて、嬉々として尻尾を動かした。片手で尻の上に押さえつけたペニスを、ふさふさの尻尾が絡みつくように撫で始める。手とも口とも違う、独特の感触でおおっと声が出た。
ペニスに巻きついて上下に動く。尻尾で扱かれるのは初めての経験で、なんとも言えない背徳感と快感を同時に得る。
白野が動揺している一瞬、タマモは確かに満足げで、勝ち誇るように笑っていた。
喜んでもらえるなら手でも口でも尻尾でも、体のどこを使ってもらっても構わない。それを証明するかのような愛撫だ。
「ご主人様はぁ、私の尻尾をもふるのがお好きなようなのでぇ、ちょーっと恥ずかしいんですけど大サービスですよ? 普段はこんなことしないんですからね?」
ありがとう、と掠れた声で呟かれたのを聞いた。
背筋にぞくぞくした感覚が走る。
冗談混じりで言ったのだが真面目に受け取ったらしい。それとも余裕がなくて考えられないのか。彼の様子にタマモの機嫌は良くなる一方である。
「ほらほら、いつでもいいんですよご主人様っ。早漏ちんぽからいつでもせーし出しちゃっていいんですからね」
ぐいぐい尻を押しつけ、尻尾でペニスを撫でて、さらに追い詰めようとする。
こうなればタマモを止められるはずもなかった。白野は必死に耐えているのだが敏感になってしまったペニスは彼の意思に逆らい、さらに硬くなり、今にも暴発しそうになっている。
はあっと息を吐いて白野が天を仰いだ。そんなタイミングでタマモが体の向きを変え、正面から抱き合って彼のペニスを自分の股の間に迎える。
太ももで挟み、ヴァギナにすりつけ、ずりっと動いた。感触が変わって白野の呼吸が乱れる。タマモは彼の胸に頬ずりをして、自らの腰を振って射精させようとする。
「ご主人様、ご主人様ぁ……!」
感じている白野の顔を見つめて気分は最高潮に高まっていた。
くっ、と苦しげな声が出た時、股の間に熱いものを感じて、しかし腰を止められなかったことで誰もいない空間に放たれ、静かに水面へ落ち、湯に混じっていく。
タマモの体に腕を回して抱きしめた。しかし力が抜けたのか、縁に手をついて支えるのをやめたせいで白野は湯船の中に座り込んでしまい、尻もちをついた。当然抱きしめたタマモも共に湯の中に沈む。
再び温かな湯に身を浸しながらキスをする。
舌を絡め合って気持ちが落ち着いた後、鼻先が触れ合う距離で見つめ合う。
「ふふふ、ご主人様……まだできますよね?」
鼻先をぺろりと舐められた。
タマモは怪しく微笑んでいて、テンションは高いが献身的な普段とも異なり、日頃とは違う妖艶さをこれでもかと醸し出している。
「もっともっと、私のことを愛してくださいね……?」
ここは彼女が作りだした空間。タマモだけが支配する場所。
外へ出るのも、内部をどう作りかえるかも、彼女の意思によって変化する。たとえマスターであったとしてもどうすることもできない。
白野は頷き、再び勃起するペニスの先っぽを、ぴたりと彼女のヴァギナに押し当てた。
FIN
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