あの悪夢ような日が過ぎ去ってから数年、私は今ロウ様と世界中を巡る旅をしている。
今までは国同士の交流の一環でしかお会いしたことがなかったロウ様だけど、とても気さくでいつも私のことを気遣ってくださる。
それに今まで知る機会がなかったけど、歴史や地理などの知識はもちろん、武術にもとても精通されていたの。
体術も呪文も会得されていて、年齢を感じさせない身のこなしには、感銘を受けたわ。
私もデルカダール城にいる時、お父様にバレないようにこっそりとグレイグに特訓をつけてもらっていたけど…
剣の素養がなくて中々上達できなかった。ロウ様はそれにもすぐ気が付いて、ご自身が使わない槍の稽古などもつけてくださった。

「槍、爪、かくとう…うむ、姫のスキル系統もだいぶ充実してきた。あとは実戦でスキルを会得していくのがよいじゃろうな」

「ありがとうございます。これもロウ様のおかげです」

私は心からの感謝をお伝えしたけど、ロウ様はなんだか浮かない御様子。
きっと、「本来なら、一国の姫がこんな戦いの全てのなど学ぶべきではない」とお考えなのでしょう。
ふふっ、ロウ様が気に病む必要なんてないのに。

「きっと私はあのままデルカダールにいたとしても、何かしらの武術を学んでいたと思いますよ」

「…ホッホッホッ、姫にはかなわんな」

そんな会話をしながら、時に魔物も倒しながら歩いていくと、今回の目的地であるホムラの里に辿り着く。
サマディー地方とは違う、じんわりと体を包み込む熱が里の中にも充満している。
荒野ほどじゃないにしても、こんなに暑い土地で暮らすのは中々大変そうよね。

「姫、戦いでも汗をかいたじゃろう。この里は温泉が有名じゃ、まずはひとっぷろ行こう…!」

その案自体は賛成。調べものために訪れたとはいえ、息抜きも必要だものね。でも…

「ロウ様、不埒なことを考えているなら容赦しませんからね?」

「ひひひ姫?!何を言うじゃ!儂はそんなこと…「えぇ、信じていますとも。ですが念のために…ね?」

「ひ、ひぇ~~~」

指の関節を鳴らしながらニッコリ微笑みかけると、ロウ様はご自身の顔を覆ってプルプル震えだす。
覗きをしようとした時のお仕置きがよっぽど効いているみたいね。そんなに怯えなくても、何もしなければ本だって仕方なく黙認してあげるのに。
…さて、今日はこれで安心してお風呂に入れそうね。私は震えるロウ様を宥めながら、今夜の宿へと足を向けた。