“数十年前滅びたとある王国があった廃墟の中に、楽園がある。”
俺はその噂を聞きつけ、遠渡はるばるこの地へやってきた。
あたりをうろつく魔物たちの目をかいくぐり、廃墟の間を歩き回っていると、ようやくそれらしき建物を見つけた。
見た目は、全壊を免れただけのオンボロ。けれど、俺はバン!と扉を遠慮なく開け、建物の中へと足を踏み入れた。

「ん?なんだ、こんな所へ何をしに来た?」

恰幅のいい店主らしき男が怪訝そうな表情を浮かべ、こちらに声をかけてくる。
俺は唾で喉を潤し、教えられた言葉を口にする。

「ここに、『王者の剣』は置いているか?」

すると、店主は鼻で笑い、ひらひらと手のひらを振って俺を追い出すようなそぶりする。

「『王者の剣』?何を言ってんだ。アンタには、『ひのきのぼう』がお似合いだよ」

…ビンゴ。あからさまにニヤけるのは我慢できたが、口角が上がるのを止められない。俺は店主の態度に臆することなく口を開く。

「なら…コイツで、俺も鍛えることができるか?」

俺は店主に『ラブリーエキス』と、ずっしりとゴールドが詰められている袋を差し出す。
それらを視界に捉えた瞬間、店主の目の色と態度が変わる。

「かしこまりました。ゴールドを確認しましたら、ご案内いたします」

店主はゴールドが入った袋のみを受け取り、中身を確認しだす。これまでの会話は、ここにある施設へ入るための合言葉。
人が集まりすぎると店の品質にも関わるとのことで、完全紹介制にするために、このやりとりとキーアイテムを知っている者しか利用できないのだ。

「お客様、合言葉とはいえ先ほどは失礼いたしました。それでは会場へご案内いたします」

一転して低姿勢になった店主、いや恐らく受付係のボーイが店の奥へと促す。
そして、店の奥にある床を触ったかと思うと取っ手を掴んで引っ張り上げる。すると、地下へと続くであろう階段が俺たちの前に姿を現わした。
かなり下まで続いているらしく、階段の先がどうなっているのか見えない。

「会場までご案内いたします。お手数をおかけしますが、扉は見えないように…あぁ、ありがとうございます。
それでは、足元にお気をつけくださいませ」

ランタンを掲げるボーイの後ろにつき、階段をゆっくり下っていく。
暗くじめっとした空気は、決して気分のいいものではなかったが、これからの時間を考えればこれくらい大したことではない。
この先に、俺の求める楽園があるのだから。