伊黒さんのことが好きだと、泣きながら言ったあの時から、ずっと私に触れる手は優しい。
手をつなぐのも、口付けだって私からだった。それは、伊黒さんが私のことを大切に思ってくれているからだと信じてる。夫婦になったのだから、焦ることはないと知っている。
でも、せっかく二人で温泉宿に来られたって言うのに、手を出さないなんて、もう失礼じゃない?彼はつい先ほど部屋の外にある露天風呂から戻ったばかりで、ほかほかと湯気を立てている。一緒に入ろうって言ったのに、断られてしまったことを少し恨めしく思いながら彼を見る。わざとわかりやすくすねたような声色で彼に言う、
「伊黒さん、もう寝ちゃうの……?」
「ああ、今日は移動で疲れただろう。君も今日はゆっくり休むと良い。」
つれない返事に、思わず頬を膨らませた。いけない、いけない、子どもっぽいからやめなきゃと思ったばかりだたのに。頬はすぐさまぷしゅ、と音を立てて萎む。
そんな様子を見ていたのか、伊黒さんは「したいことは明日すればいいさ。」と、わかったような分かってないようなことをいって小さく笑った。
もう、もう、もう!すたすたと歩み寄って、座っている伊黒さんの隣に座る。腕を組めば、彼の腕は私の乳房の間にすっぽり埋まってしまう。
「伊黒さん、私寂しいですよ。……恋人のお誘いにも気付かないんですか?」
「いや、それは……」
途端、しどろもどろになる彼が愛しくて、襟ごと引き寄せて唇を重ねた。油断した彼の唇の隙間に舌を入れる。それには応えてくれて、少し安心する。舌同士が妙にいやらしい音を立てながら、じゃれ合いを続ける。
ちら、と彼の股座に目をやると、立派なそれが浴衣を持ち上げていた。するすると右手だけで彼の帯を解き、性器をあらわにする。彼は止めようとするが、左手でそれを抑えながら、彼の舌を弄んだ。
すっかり露になった塊を柔く握ると、彼は声を漏らした。
「あまり強く触れないでくれ……。」
顔を覆いながら、触れるたびに肩がふるえている。
「伊黒さん、ごめんなさい。苦しいかった……?」
思わずそう聞けば、
「いや、そうじゃない。善くしてもらうばかりなのが恥ずかしいんだ。」
と言う。これが良い、ということを知って、張り切った私は彼のそれをぱくりとくわえた。
「うっ、な、何を!?」
筋張った下側をねっとりと舐め、先端のぬらぬらとしたところを思い切り吸ってみる。玉を転がすように愛で、付け根から先端までじっとりと舌でちろちろと愛撫した。
「はぁ、も、やめ、やめていいっ!ふっ……は……出るっ」
一層震えた彼の棒から出た液体で、私の口は満たされた。苦い、青臭くて苦くて、愛しい味。こぼれないよう、人差し指で掬ってすべて飲み込む。
「ねえ、伊黒さん、私のことも善くしてね……?」
後ろに倒れこんでいる彼の上に乗り、首筋をなぞった。

FIN