団長達との旅から修業のために一時的に離脱したアンチラは、棒術が特に強いと噂される山寺にて指導を受け、少しづつ確実に力をつけていった。

しかしある日、先輩との組手の際に左足を捻ってしまい、数日の休養を余儀なくされてしまう。

「あーあ、今頃団長たちどうしてるかなー」

呑気に流れる雲を見上げてアンチラはボソリと独り言を呟く。

「これアンチラ、見学も大事な修業じゃぞ」

「うっ、すみません」

師範代に叱られ、視線を門下生達の修業光景に戻す。

自分の動きとどこが違うのか、先輩の中で1番綺麗なのは誰かなど、見てわかる情報を頭に入れては、上半身だけを確認のために動かしてみる。

「はっ、ほっ、こうして、こう……うーん?」

その姿はまるで親の真似をする子供のようで、微笑ましい様子ではあった。

邪な目で見ている人間がいるとも知らずに、アンチラは毎日同じように見学に励んだ。

そして足が治り復帰したその夜のこと。

「アンチラちゃん」

「あ、先輩?なんでしょう?」

アンチラにしか向かう理由がないはずの離れへと続く廊下の途中で、彼女はふいに後ろからドラフ族の大男に声をかけられた。

「師匠から奥義をこっそり教えるように頼まれたんだよ」

「え?いいんですか?」

「俺はよく分からないけど、ほら見学中もちゃんと型の真似とかしてたでしょ?師匠がそれで何か感じたんじゃないかな?」

そう言われてアンチラはわーい、やったー!とぴょんぴょん跳ねて喜びを表現した。

「でも教えるためには一応俺からもテストしないとだから……とりあえず一旦部屋まで持ち物を取りに行こうか」

「はーい!」

元気よく返事をして踵を返すアンチラの後ろで、男はニヤリと口角を上げた。

組手の時に感じた圧倒的な力量差、この少女は確実に自分には勝てない。

ということは、部屋にさえ入ってしまえば余裕でどうにでも出来る、と男は考えたのだ。

騙されているとも知らずに鼻歌を歌いながらアンチラは廊下を跳ねるように歩き、ついに部屋へとたどり着いた。

「ここで待っててくださいねー」

と言って部屋に入り、扉を閉めようとするアンチラ。

しかし男は手でそれを制すると

「あ、ここでも試験があるから」

と言って部屋の中へと入ってしまった。

「こんなところで?」

キョトンとした顔でアンチラは男の顔を見上げる。

そうこのあどけない表情。これがいいんだ。と男は顔に出さないよう堪えつつこの後のことを妄想した。

「そう、まずは目隠しをして如意棒を探し当てる」