戦争があった。大きな戦争だ。その戦争には、生体兵器も投入された。
戦争が終わった後も、街の周囲には戦争で使われた生体兵器がうろついている。
その生体兵器を狩る者たちがいた。ハンターと呼ばれる者たち。
トウマも、そのハンターの1人であった。
◇◇◇
廃墟が並ぶ区画に、彼はいた。
黒い革ジャケットに黒い開襟シャツ、黒いスラックスという黒一色の青年。
年齢は20代の後半に見える。
黒い服装の青年……トウマの右手には、大型のリボルバー拳銃が握られていた。
彼の前には、大きな獣がいる。
額から角(つの)が生えているライオンのように見える。それは戦争の時に使われた生体兵器だ。
角を持つライオンのような生体兵器は、雄叫びを上げてトウマに飛びかかる。
トウマは冷静だ。冷静にリボルバー拳銃の銃口を生体兵器に向け、トリガーを連続して引いた。
顔面に大口径の銃弾を複数受け、地面に落ちる。そのまま動かなくなる生体兵器。
すると、生体兵器の肉体に変化が生じた。肉体が砂のようになり、崩れる。
元は生体兵器であった砂の山には、不思議な輝きを放つ石があった。生体兵器のコア。
これをハンター協会に持っていけば、金と換えてくれる。
トウマはコアを拾い、革ジャケットのポケットに押し込む。拳銃をショルダーホルスターに収めると、彼は廃墟が並ぶ区画を後にした。
◇◇◇
人で賑わっている街。その店は、裏の通りにあった。
《月の妖精》亭……それが、その店の名前である。
トウマはその店の、窓際のテーブル席に座っていて、酒が満たされているグラスを傾けていた。
壁の一面はモニターになっており、女の顔と名前、そして金額が表示されている。
グラスが空になると、「トウマ」と声をかけてくる女性が1人。
視線を向けると、そこには癖のない金色の髪をセミロングにしている女性が立っていた。
整った顔立ちをしており、美女と呼んでいい。
身にまとっているのは、胸元が大きく開いており、スカート部がミニになっているオレンジ色のワンピース。
ワンピースの胸を押し上げている膨らみのサイズは、軽く見積もってもGカップはあった。
壁のモニターに顔が表所されている美女。表示されている名前はリアン。
「おかわりは必要かしら?」
リアンに聞かれて、トウマは「いや、いい」と返す。
そして革ジャケットの内ポケットから、1枚のカードを取り出した。
小さな液晶画面と、いくつかのスイッチが付いている金色のカード。
トウマはそのカードをリアンに向け、スイッチを操作する。すると、彼女の手首にはまっているブレスレット型の端末が電子音を鳴らした。
リアンは端末の液晶画面を見る。そこには数字が表示されていた。壁のモニターに名前と一緒に表示されている数字。
それは、彼女の指名料だ。
リアンはウェイトレスとであり、娼婦である。
《月の妖精》亭、ここは酒場にして娼館であった。
「ご指名、ありがとうございます」
リアンは極上の笑みをトウマに向ける。
椅子から立ち上がったトウマは彼女の腰を抱き、店の奥にあるエレベーターに向かった。
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