「マルティナ姫、そろそろ話していただけませんか?勇者の居所を」

体を拘束されて床に転がる私を、ホメロスは冷笑を浮かべながら見下ろしくる。
その顔には私が知る昔のホメロスの面影はなく、まるでホメロスの皮を被った魔物のよう。

「何度訊かれても、知らないことは話せないわ」

魔法によってジワジワとダメージを与えられているけど、こんなものいくらでも耐えられるわ。
だから、私を拷問してあの子の居所を吐かせようなんて無駄な行動よ。
その間にもあの子はみんなと六軍王を倒し、力をつけていく。すぐにでもあなたを倒せるほどにね。

「やれやれ、姫は昔から頑固でしたからね。こうも要領を得られないなら、やり方を変えるしかないですね」

パチンっとホメロスが指を鳴らすと、巻かれているロープからどす黒いオーラが溢れ、無理やり私の体を起こす。足の拘束は解かれたけど、全く自分の思うように動かせず、無理やり歩かされる。

「っ、どんなことをされたって、私はみんながいる場所なんて言わないわよ」

「いえ、姫にはもう何も話していただく必要などありませんよ」

「え?」

真っ暗で中がどうなっているかもわからない部屋に着き、ホメロスの言葉の意味を考える間もなく、
私はドンっと背中を押されて部屋の中に倒れ込む。

「そこでしっかり調教されてきてください」

時間の流れが急に遅くなったように感じる。ここに取り残されたら、もう二度とみんなの元に帰れなくなる、
頭の中で本能がけたたましく警報を鳴らす。

「もっとも…次にお会いする時に、正気を保っているかわかりませんが」

「待ちなさい、ホメロス…!」

急いで身を起こした私の声を無視して、ホメロスの背中は扉の向こうへと姿を隠す。
ここに残されたのは私以外、真っ暗な空間だけ。
明かりは一切なく、暗闇にまだ順応できていない視界ではこの部屋がどんな造りなのか、把握できない。

「何としてでも、ここから脱出してみんなのところに…きゃ?!や、なに?!」

気がつくといつの間にか、部屋には魔物の気配が溢れていた。その数、2桁は確実にいる。
さっきまで魔物の気配なんてなかったのに、どうやってこの部屋に?!…考えても仕方ないわ。
未だに手は拘束されているけど、足なら自由に動かせる。ぬかったわね、ホメロス。
私のかくとうスキルを侮らないで頂戴!

「あなたたちに構ってる時間はないわ。全部蹴散らしてあげる!」