ウルノーガを倒し、平和を取り戻した世界。多くのものを失ってしまったけど、それでも私たちは前を向いて生きていかないといけない。
今はもう、この世界にはいない勇者の仲間として、「あの悪夢のような日々の中で傷ついた人たちに手を差し伸べよう」と、
それぞれが各地を巡って国や町など大きな組織では手が届かないところのトラブルや問題解決に励んでいる。
…みんな口に出さないけど、気を紛れさせる何かやることが欲しかったんだと思うわ。…だって私がそうだから。

「おい、このクソガキ!てめぇ、よくも俺の……を…!」

「ひ、ひぇっ」

あぁ今日もトラブル発見。しかも相手は子どもじゃない。いくら生活にゆとりがないからってあんな風に怒鳴り散らすなんて。
まったく、感傷に浸る暇もないわね。

「やめなさい!」

私はすぐに男と少年の間に割って入り、男が振り上げた拳を受け止める。

「あ?なんだ姉ちゃん、部外者がしゃしゃり出てくんじゃねぇよ」

「それは無理な話ね。子どもに暴力を振るおうとするなんて、どんな事情があっても見逃せることではないわ」

拳を払いのけ、少年の姿を隠すように立ち上がると、男は険しい表情を一転させ上機嫌にピューっと小さく口笛を吹いた。

「気が変わった。姉ちゃん、アンタがこのガキがやったことの代わりに、弁償してくれるなら、ガキは見逃してやる」

「!そ、そんなのダ「いいわよ」

即答してやると、男はニヤニヤとあまりいい雰囲気ではない笑みを浮かべたけど、構いはしないわ。
私は少年の方に振り返り、安心させるように笑顔を向ける。

「大丈夫よ。あんな奴、私がどうにしかしてあげるわ。だから、安心して」

そう声をかけても少年の表情は晴れなかったけど、大丈夫すぐわかってもらえるわ。
…人間相手に手荒なことはしたくないけど、その”弁償”って内容によってはアンタごと踏み倒してあげる。

男はすぐ近くにある建物に入っていくので、私も後に続いてその中へと入っていった。