甘露寺蜜璃は炎柱の家の前でかれこれ十分ほど立ち尽くしていた。
「ど、どうしよう……これを相談するなら師匠がいいと思って来たのだけど、でもいざとなると……」
ぎゅっと目を瞑って拳を作っていると、玄関の扉がガラリと開く。
「む! 甘露寺ではないか。どうした、こんな夜遅くに」
「あ、し、師匠……あの、折り入ってご相談が」
戸惑った様子で話す蜜璃に、炎柱である煉獄杏寿郎は「うむ!」と快活な笑顔を見せた。
杏寿郎の部屋に通され茶を振る舞われても、蜜璃は下を向いたままでいた。
「どうした、甘露寺。俺で力になれると思ったから来てくれたんだろう?」
「はい……あの、師匠!」
「ん? 何だ」
まったくこの後の会話を予期していない杏寿郎に、蜜璃はドキドキしながらも意を決してこう告げた。
「あの! 私、その……好きな人がいて、でも、その人とちゃんと夜を過ごせる気がしないんです。だから、師匠に手ほどきをお願いしたいんです!」
顔を真っ赤にしながら言った蜜璃に、杏寿郎は「よもや……」と一度呟いてから、優しそうな目をして蜜璃の頭を撫でた。
「そういうことなら、相手をしよう。弟子の成長のために一肌脱ぐのが、師匠の役目というものだからな」