「ゆっ!結城さんっ!僕とっ!付き合ってくださいっ!」

授業終わりに私を校舎裏に呼び出した同じクラスの男子は、緊張と気負いのせいで震える声でそう言った。
告白。意中の相手を呼び出して思いを伝えると言うその行為を、私、結城美柑は今年に入ってから幾度となくされてきた。数が多いせいか、途中から印象にも残らない相手も増えてきている。正直全員は記憶していないし、名前すら知らない相手だっていた。
目の前の彼もそうだ。どちらかといえば地味だし、この人なら彼氏にしてもいいとも思えない。だから断ろう、いつものように。そう思っていた。
しかし改めて彼の顔を間近で見た時、私のその考えは大きく揺らぐことになった。
不細工というわけじゃないしバランスだって悪くないが、どこかさえない印象の彼。しかしその雰囲気がどこか似ているのだ。私にとって一番身近な異性であるあいつに。
その事実と私の中に芽生えた想い、この二つに気づいた時、私の中である計画が立った。私はわざと焦らすような口調で彼に返す。

「…うん、いいよ。よろしく…お願いします」

後日この出来事を私の口から聞き、友人の幸恵と真美はたいそう驚いていた。「あの美柑についに彼氏ができた!」と、学校中に触れ回りそうな勢いだった。
と言っても彼女達は私の思惑を知らない。どこか彼に異性として惹かれるものがあり、付き合うことにしたと思っているのだろう。残念ながら私の心を占めていたのは、恋愛感情などと呼べるものではない、もっと別の想いだった。
その想いに基づき、私がここ数日彼にしてきたのは、目の前でわざと転んでスカートの中身を見せる、胸が見えるか見えないかのラインまで前屈みになる、偶然を装い彼の体、特に下腹部に何度も触れるなど、どこかの誰かなら赤面して気絶するようなことばかりだった。彼は雰囲気だけでなく、そういう時の反応もその誰かによく似ていてた。顔を真っ赤にして視線をそらし、続いて膨らんだ下半身を誤魔化すように前屈みになる、その様子がたまらなく面白かった。これは病みつきになる、やめられない。
私が彼と付き合い始めた理由、それは私の兄、結城梨斗によく似た純情くんをからかい、その反応を見てみたかったからだ。

「ゆっ!結城さんっ!見えてるっ!見えてるからっ!」
「あっ、ほんとだ。ふふっ。教えてくれてありがとっ」

私が彼をからかう度に何度も行われたやりとりだ。彼のウブな反応が私の嗜虐心をくすぐって仕方ない。