魔導士ギルド「妖精の尻尾」。頼めば色々な仕事を請け負ってくれる魔導士達が何人も在籍しているギルドに、僕は初めて依頼をすることにした。と言ってもモンスター退治とか財宝探しと言ったようなファンタジーじみたものではない。僕の職場で催される宴会に、盛り上げ役として女性魔導士に参加してもらうと言う、いわゆるホステスやコンパニオンのような役割の依頼だ。職場の男連中は綺麗所がいっぱいと聞いて大盛り上がりだったが、僕は正直盛り上がれなかった。一番の若輩ということで色々セッティングさせられるだけでも大変なのに、昔から憧れていた妖精の尻尾の魔導士に、よりにもよっていかがわしいサービスをする仕事を依頼しなければならないとは…。

疲労感と罪悪感に苛まれているうちに当日がやってきてしまった。会場となった旅館、その大広間には鼻息を荒くした男達が所狭しと並び、程なくしてステージにルーシィ、エルザ、レビィ、果ては幼い少女ウエンディに至るまで、女性魔導士が次々と姿を現した。誰も彼も僕が子供の頃から憧れていた魔導士ばかりだ。そんな彼女達がこんなところでこんな仕事を…。
考えれば考えるほど胸が痛くなり、このような場を設けてしまった自分に嫌気がさしていく。ついに耐えきれなくなり、僕は会が一段落するタイミングで大広間の外の廊下に出た。上司達は若い男が一人でも減ってくれて正直ラッキーと思っただろうが…。

「はあー…」

疲れと申し訳なさをミックスしたような大きな溜息をついた僕。その僕に突如話しかけてきた人がいた。

「おいおい、随分とお疲れじゃないか。そんなんじゃ幸せ逃しちまうぞ〜」

何が起きたのか分からず反射的に声のした方向を向くと、浴衣姿のある人物が僕を見下ろすように立っていた。向こうは僕のことなど知らないだろうが、僕の方はその相手に見覚えがあった。
さっきまでステージに立っていた女性魔導士の一人、カナ・アルベローナさんだ。実力派として有名な魔導士。そして僕が誰より憧れ、会いたいと思っていた人だった。
思いもかけない場所で憧れ続けた人物との邂逅を果たし内心舞い上がる僕だったが、同時にいくつもの疑問が湧き思わず尋ねてしまう。

「カっ!カナさんっ!?何でこんなところにっ!?さっきあんなに飲んでたんじゃ…」

職場の男連中に付き合わされる形で、魔導士達も相当な量の酒を飲んでいた筈…。樽に何杯というレベルでは効かなかった筈なのに…。