E組を卒業した私――矢田桃花は、地元の進学校に通っています。
E組で刺激的な毎日を過ごしてきた私にとって、高校生活は平凡な感じでしたが、同級生の彼氏もできました。
ただ、付き合って半年も経つとだんだんお互いの嫌なところやつまらないところも見えてきて、ちょっと倦怠気味です。
一緒にいて楽しくないわけじゃないんですが……。
倦怠気味の一番の理由は、セックスのときの彼の淡白さにありました。
私も彼も、性体験はお互いが初めてだったんです。
最初はドキドキワクワクしながらいろいろしていたんですが、私の方がどんどん好奇心が湧いてくるのに対して、彼は少し引き気味でした。
それは彼自身にも理由があって……。彼、「早い」んです。
入れる前に、ちょっと触っただけでイッちゃうこともあるくらい。
私はもっと「イク」というのを経験したいのに、彼がそこまでもたなくて。
毎回そんな感じなので、彼もセックスについて引っ込み思案になっちゃうんですよね。
だんだんそっち方面の話題を避けるようになって、結果、淡白な付き合いになっちゃっていました。
そんなことが、最近少し悩みの種です。なんとなく、元E組の親友たちにも相談しにくくて。
殺せんせーが生きてくれていたら、あの人にだったら、こんな悩みも打ち明けられるかも知れないのに。
でも、殺せんせーはもういない。
そんな私の、彼氏と遊ぶ以外のストレス発散方法は、放課後に、友だちとマックでおしゃべりすること。
「暗殺」などという言葉とは無縁な世界で、日常を生きる女の子の友だち。
そんな彼女たちと、時には女子ならではのエッチな話で盛り上がったりするのが楽しかったのです。
もちろん、人の目もあるのであまり大きな声ではしゃべれませんが……。
そんなある日のこと……。
放課後、いつものようにマックでおやつを食べてから途中まで一緒に帰り、別れました。
でも、その日の私はもう少し散歩がしたくなり、制服姿でカバンを手に、ぶらぶらと公園内を歩いていました。
ふと気がつくと、いつもは通らない道を歩いており、そこは木々が生い茂る見通しの悪い所でした。人気はなく、聞こえるのは風の音だけ。近くには公衆トイレがポツンとあるだけで、何となく不気味さが漂っていました。
思い出しました。そういえば、ここは以前に痴漢や変質者が出たという噂が立ったところです。そのことを思い出すと急に怖くなり、私は思わず早足になっていました。
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