釘崎野薔薇はその日、見たこともない箱型の物体に遭遇する。サイズとしては両掌に収まる程度なのだが、全体が黒一色で統一されているところが気になる代物だった。ある日の朝、目を覚ました自分の枕元においてあったところを発見し、何の気なしに手にとってみた野薔薇はその箱を見つめながら呟く。

「何だこりゃ…?いったい誰がこんなもん…」

彼女がそう言った直後突如箱の蓋が開き、中から黒い煙が溢れ出す。反射的に後ろに飛びすさった野薔薇だが、不意をつかれたため少々煙を吸い込んでしまった。

「ごほっ!ごほっ!げふっ!…な、何だこれっ!何がどうなって…」

軽くパニックになりながらも、野薔薇は冷静に今の状況を見極めようとする。しかしそれは叶わなかった。体の奥から込み上げてくる不思議な感覚に脳を支配されたためだ。
背筋がゾクゾクと震えているのに、なんだか火照ってきたように感じる。何かが体の芯から溢れ出すようなこんな気分になるのは初めてだった。

「何これ…。これ…やば…」

そう言った彼女は早くも飛びそうになる意識を必死につなぎとめ、家の外へと飛び出したのだった。

街中を歩く人の波。仕事に向かう途中の男性。街中をぶらついている若者。それら多くの人々の中で野薔薇が真っ先に目に止めたもの。それは見るからに幼い、まだ10歳前後と思われる一人の少年だった。彼らの姿をその目で捉えた瞬間、彼女はほぼ反射的にそれに近付き、何の躊躇いもなく声をかけた。

「おーい、坊や。こっちこっち…こっち見ろって」

その声を聞いた彼らが振り向いた先には、どういうわけか頬を蒸気させ、トロンとした目つきの野薔薇が立っていた。

「な…何ですか?」

恐る恐ると言った様子で野薔薇に問いかける少年。いきなり見ず知らずの女から声を掛けられれば無理もないだろう。しかし野薔薇の方はそんなことなどお構いなしに続けた。

「坊や…私と、すっごくいいことしないか?」

目の前の女が何を言っているのかわからずポカンとしてしまう少年だが、野薔薇は有無を言わせないと言った口調で更に誘いをかけた。

「ほらこっちこっち…。こっちに来れば…すっごくいいものが見られるぞぉ…」
「は…はい」

野薔薇から誘われるままに、人気のない路地裏へと赴く少年。その先で見たものに彼は驚愕する。角を曲がり路地裏へと足を踏み入れた少年の目に飛び込んできたもの、それは自身の視界から消えたほんの一瞬の間に衣服を全て脱ぎ去り、全裸になって彼を待ち受ける野薔薇の姿だった。