「よーしここだ!これが僕の切り札!」

威勢の良い掛け声と共に、僕は勢い良くカードを構える。と言ってもその姿を見たり、掛け声を聞いたりする相手はいない。僕は一人きりで遊戯王カードを使ったデュエルに興じていた。
本来は二人で対戦するものなのだが、僕にはそんなことができるような友達はいないし、慣れてしまえば一人で遊ぶのもなかなか楽しい。どれだけ力強く叫んでも文句は言われないし、どんなに格好つけても笑われない。そんな楽しさを噛み締めながら僕は続ける、力を込めて…。

「行くぞ!ブラックマジシャンガール召喚!」

そして僕は手に持っていたカードをテーブルに叩きつけ、召喚のためのアクションとポーズをとる。
その瞬間、『ボワワワ〜ン』という音が聞こえ、辺りを薄いピンク色の煙が包み込む。いきなりのことに僕は混乱してしまい、ただただ咳き込み続けるしかなかった。

「ごほっ!ごほっごほっ!ごふっごふんっ!な…何が」

ようやく少しだけ咳が落ち着き辺りを見回した時、僕はおかしな点に気がついた。さっきまで間違いなく僕しかいなかったはずの部屋の中、ピンクの煙の向こうに人影が見えるのだ。見えるのはシルエットだけなのだが、その影にはとてつもなく見覚えがあった。細長く尖った頭部、綺麗にウェーブした長い髪、そして腕先の部分に見える先端が丸まった杖のような物。僕が何度も目にしてきたものだったが、それ故にこんなところにいるはずはないと真っ先に考えてしまう。
徐々に煙が薄くなっていき、その向こうの人影がよりはっきりと見えるようになる。そしてあるところまで行った時、その人影は明るい声でこう言った。

「ブラックマジシャンガール参上!呼び出してくれてありがとうございます!マスター!」

シルエットだけでなくその色や表情まで見えるようになったが、それによって確信した。この人はついさっき僕が使ったカード、ブラックマジシャンガールに間違いないと。しかしそうたやすく納得はできない。

「えっ!?えっ!?ええっ!?なっ!何でっ!?」

上手く言葉が出てこず、アワアワと疑問符を並べる僕。それに対して彼女は笑顔を向けて答えてくれた。

「デュエルモンスターズのカードには、全てそのカードの精霊が宿っているんです。そして使う人の純粋で熱い想いにより、その精霊は実体化するんです」

言葉でそう説明されても全くピンとこない。呆然と彼女を見つめる僕だったが、彼女の方はキョロキョロと辺りを見回している。