その日、家入硝子はある人物のことについて頭を悩ませていた。

「う〜ん…やっぱり何度考えても分からない。何であんな状態から生き残れたんだ…?」

硝子が必死に思考を巡らせる原因を作った人物、それは彼女が医師として務める学校である呪術高専、その一年生である虎杖悠仁だった。
この二人は知り合ってから決して日が浅くない。ある程度長い時間を一緒に過ごし、お互いのことは少なからず分かっていた。にも関わらず硝子が改めて悠仁について考え始めたのは、彼の身に起こったある出来事がきっかけだった。
ある日、ペットボトルに入った飲み物を飲んだ悠仁が突然倒れたという知らせを聞き、硝子はすぐさま現場に駆けつけた。そしてペットボトルの中身を確認したところで彼女は目を剥くことになる。ペットボトルに入っていたもの、それは医学の研究に使用される毒物だった。医師として勤務し始めてからの研究の過程で出会ったその毒物は、専門家曰くトリカブトとフグ毒、更にタランチュラをブレンドしたに等しいレベルの途轍もない猛毒で、少量であっても口に入れてしまえばまず間違いなく助からないと言われていた。
なぜそんなものがペットボトルに入れられ、あまつさえ一生徒の手元に渡ったのかという疑問はあったが、そのようなことを気にしている場合ではない。

「救急車!大きい病院に運ぶの!早く!」

周囲で呆然と見ていた生徒たちにそう指示を出し、無駄だと知りつつ心肺蘇生を試みようとした硝子。そんな彼女をその日一番驚かせることが起こった。
死んでもおかしくない、というより死ななければおかしいレベルの猛毒を飲み倒れていたはずの悠仁が、その直後に何事もなかったかのように起き上がったのだ。
あまりに信じ難い光景に絶句する硝子だったが、悠仁はそんな彼女に「あっ…お疲れっす」とだけ言って悠然と歩いて行ってしまった。
以前も彼が猛毒から生還したことはあったが、今回の件は流石に無視できない。以前の件と言いこれと言い、悠仁が毒物への特別な耐性を持っているとしか思えない。
これは医学に携わるものとして是非とも解明したい。そう思って色々資料を漁っていたのだが、どれだけ調べてもその実態が見えない。それ故彼女は頭を抱えていたのだった。

「虎杖…彼の体は一体どうなっているんだ?あんな状態から何事もなく復活するなんて…」

そう呟きながらも彼女は、今の研究では限界があることを悟りつつあった。

「う〜ん…彼の生命力は一体…?ん…?生命力?もしかして…」