ゴクリっ…。
いわゆるいかがわしい店、しかも本番ありの店の前に立ち、僕は思わず生唾を飲んだ。
このアクセルの街はそれなりに性的な娯楽が充実したところだ。サキュバスのお姉さんに依頼すれば、素敵な淫夢を見せてくれるという商売もある。僕もずいぶんお世話になった…。しかし人間というのは欲張りなもので、何度も夢の中で美味しい目に合わせてもらううちに、だんだんと満足できなくなっていった。夢の中では経験豊富でも、現実世界での僕は童貞以外の何者でもない。
そんな現実を変えるべく、僕はとうとうある決意を胸にここに来た。そう…風俗のお姉さん相手に童貞を捨てるために。
ここまで来るだけでも相当な覚悟が要ったが、いざ店の前に立つとより一層緊張する。逃げ出したくもなるが、すでに予約もしてしまっている。キャンセル料をのことを考えるともう前に進むしかない。
これ以上ないほど腹をくくり、僕はとうとう店に足を踏み入れた。

「あっあの!よっ予約してたものですけど!」
「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。それではお名前をお伺いいたします」

緊張で声が裏返った僕を不審な目で見ることもなく、受付の男の人は優しい口調で言った。僕が名乗るとその人は「承っております」と告げて説明を始めた。

「お客様が予約されましたのが60分コースですので、60分間お部屋で女の子と一緒に過ごしていただきます。ご指名はございませんでしたので、こちらで女の子を選択させていただきます。よろしいですか?」
「…はい、お願いします」

流れるような説明に圧倒されながらも、僕はなんとか声を絞り出した。

「それではお部屋にご案内いたします。こちらにどうぞ」
「…はい」

導かれるままに僕は奥の部屋へと踏み込む。

「間も無く女の子が来ますので、こちらでお待ちください」

そう言った直後にドアが閉められ、一人になった僕は側に置かれていたマットの上に腰を下ろした。改めてもうすぐだと思うと緊張してしまう。どんな初体験になるのだろう?
そんなことを考えて悶々としていると、しばらくして部屋の扉がノックされた。
僕が「どうぞ」と返事をすると、「失礼します」という声と共に扉が開き、一人の女性が入ってきた。バスタオル一枚だけを体に巻いたその人の顔を見た時、僕は驚きのあまり思わず声をあげた。

「ウィズさんっ!?なんでここにっ!?」

僕のその声とは対照的に、ウィズさんは不思議そうな表情を浮かべていた。