「ねっねえ…。ちょっと話あるんだけど…」

突如背後から声をかけられ、俺は一瞬硬直する。振り返らなくとも声の主が誰なのかはすぐに分かった。それでも振り返ってその相手にこう告げる。

「真姫…今日は何?悪いけど今日は買い物とかには付き合えないよ」

俺がそう言いながら背後に視線を向けた時、その相手、西木野真姫の顔は若干赤らんでいた。
小さい頃から俺と家が隣同士の、幼馴染と言っていい仲だ。その贔屓目なしに見ても美少女だと思うし、通っている女子校でもすくーるあいどる?というものをやっているらしい…。間違いなく華のある存在なのだが、正直この幼馴染のことを俺は好きになれない。世の中的にはツンデレと言われる部類なのだろうが昔から人使いは荒いし、俺に対する態度も高飛車なものだった。どれだけ容姿が美しくても性格がキツくては好感は持てない。
そんな相手から不意に呼び止められれば警戒するのも当然だろう。またいつものように荷物持ちとして駆り出されるのか…。そんな不安を振り払うように目一杯勇気を振り絞って反抗してみた。
正直また罵られるのだろうと思っていたが、その予想に反して彼女の反応は大人しいものだった。

「ちっ…違うわよバカ。そういうのじゃなくて…」

道行く人がチラチラと見ていく中、彼女は中々切り出そうとしない。そろそろ周囲の視線が痛くなってきた。痺れを切らして俺の方から沈黙を破った。

「えっと…何?何か用事?」

そこまで聞いてようやく彼女は口を開いた。

「あの…私達、昔から長い時間一緒にいるし、仲も悪くないでしょ?だから…私と、付き合ってみない?」
「………は?えっ?どういうこと?」

なんとも間抜けなリアクションをとってしまった俺に対し、真姫は焦れたように返してきた。

「だから!私と付き合ってって言ってるの!あんたのことが好きなの!だから…」

彼女がそこまで言ったところで俺は今の状況のマズさに気付いた。ただでさえ人通りが少なくない道なのに、聴かれたくない話をする彼女の声が大きすぎる。

「ちょっ!ちょっと!こっち!こっち来て!」

俺は慌てて真姫の手を引き、人目につかない路地裏へと引っ張っていった。世間様の目を避けられる場所まで逃げ込んだ所で、彼女に発言の真意を尋ねる。

「えっと…どういうこと?付き合う?」
「そのままの意味よ。あんたのことが好きなの。彼女になりたいのよ。何度も言わせないでよ、恥ずかしいじゃない」

照れた様子でそう言う真姫。まさかこれは…世間で言うところの告白というものなのだろうか。