「西片―。ちょっと手、見せて」

隣の席に座っていた私から突如そう話しかけられたクラスメイト、西片はピクリと肩を震わせてこちらを見た。

「えっ?何っ?手、見せるの?」
「そうだよ。今から手相占いしてあげる」

そう聞いた西片は意外そうな表情を浮かべる。

「えっ?高木さん…手相占いとかできたの?」
「うん。まだ勉強中だから簡単なものだけどね。ほら、早く見せて」

私がそこまで言ったところで西片は恐る恐るというか、どこか観念した様子で右手を差し出した。
これまで何かにつけて自分をからかってきた私からこんなことを言われたのだ。西片からすれば何かあると勘繰るのも当然かもしれない。実際今回だって手相占いの名目の下、西方の手に触って彼の反応を見るのが目的だった。
計画通り彼の手に執拗なまでに触れる私。たまにチラリと西片の顔を見ると、目が合う度に顔を真っ赤にして視線を逸らす。その反応が可愛くて繰り返し同じことを仕掛けてしまう。

「高木さん…どう?何か分かった?」

その声で私は手相を見ていたことを思い出す。内心の焦りを隠しつつ、如何にも長時間真剣に見てましたという体を装った。
そして改めて彼の手相を見た時、ある事実が分かり少なからず驚くことになった。努めて冷静に私は西片に伝える。

「んーと、西片は結構Mっ気があるみたいだね。長いM線が入ってる」

聞きかじった程度の知識からそう言ったのだが、意外にも西片には響いたらしい。

「えっ!?俺Mなの!?いやいやいや、そんなことないよ!?普通だって!」

取り繕うように慌てて否定する西片。そんなにムキになることだろうか?別に恥ずかしいことでもないように思うが…。
そんな疑問を抱いた直後、私の中である計画が出来上がった。ニヤリとしてしまうのを堪えながら彼に向けて言う。

「そっか…西片はMじゃないんだ…ふうん…」

そこまで言って彼の顔を覗き込み、私は最後の一言を放った。

「じゃあ確かめてあげる。学校終わったら…私の家で…」

西片の性格はよく分かっている。私からあんな挑発じみたことを言われて逃げ出すなんてできる筈がない。そんな私の思惑通り西片は放課後、私と一緒に私の家を訪れた。

「いらっしゃい、上がって西片」
「お、お邪魔します…」

そのまま私に連れられ部屋へと案内される西片。女子の部屋ということを意識しているのか、側から見ても分かるくらい緊張している。
二人揃ってベッドに腰を下ろしたところで、私は本題に入ることにした。