「ああ…愛しのザスティン様。あなたのその美しい心を蝕む悩み…できるなら私が代わりに背負って差し上げたい…」

天条院沙姫は付き人二人を前にして座り、教室で静かに溜息をついた。彼女が思い浮かべているのは、彼女が恋焦がれる男性ことザスティン。沙姫の後輩に宇宙人の姫がいるが、ザスティンはその従者にあたる。ある出来事がきっかけで彼に助けられて以降、沙姫はザスティンにゾッコンとなるのだった。

常日頃から彼を慕い、その心を射止めるべく策を講ずることの多かった沙姫。そんな彼女がザスティンのことで心を痛めているのにはある理由があった。
ザスティンは普段、ある漫画家のアシスタントとして働いているが、これまでに何度かその仕事を休んだことがあった。その理由は決まって「親戚の結婚式に呼ばれたから」というもの。
そして最近、同じようなパターンでまたも彼が結婚式に出席する機会があった。その彼が地球に戻ってきた際、ボソリと呟いていた言葉を沙姫は聞いてしまったのだ。

「う〜む…私も結婚式に呼ばれるだけでなく、呼ぶ立場になってみたいものだ…」

彼にしてみればほんの些細な呟きのつもりだったが、沙姫はそうは捉えなかった。彼が真剣に思い悩み、一刻も早く結婚したいと考えている、そう解釈してしまったのだ。
日々ザスティンのことを想い、彼に尽くすべく積極的に行動してきた沙姫。その彼女がザスティンのそんな呟きを聞き、黙って手をこまねいているはずがない。何とかして彼に結婚相手を見つけてあげたい。そんな想いを抱え、沙姫は頭を悩ませるようになった。

「あれほど魅力的な男性ですもの。あの方に釣り合う女性を見つけるだけでも大変ですわ。ザスティン様にふさわしい結婚相手…そんな人がいないものかしら?」

真剣な表情の沙姫だが、付き人の二人、凛と綾はそれとは対照的な表情を浮かべている。と言っても綾の方は不安など全くないと言わんばかりの明るい表情、凛の方はそもそもその悩み自体が馬鹿馬鹿しいとでも言いたげな表情だったが…。
最初に口を開いたのは凛だった。ため息でもつきそうな勢いで言った。

「沙姫様…結婚相手を見つけて差し上げるより、ご自身がザスティン様とご結婚した方が早いのでは…」

普段からザスティンを想い慕っている沙姫なら、真っ先に思いついてもおかしくないような方法だが、意外にも沙姫は顔を真っ赤にして否定してきた。

「なっ…何を言いますの凛!?そんな…私があの方の結婚相手だなんて…嬉しいけれど…恥ずかしいですわ!」