「まったく、いい歳をしてこんなことをするなんて…どう責任を取られるおつもりですか?」

荷物や書類が雑多に詰め込まれた小さな一室で、威圧するような口調でそう言い放つ一人の少女。机を挟んで彼女の真向かいに座る中年の男は、肥え太った体をこの上なく小さくするようにしてその叱責に耐えていた。

「反省や弁解の言葉もなしですか…。あなた…自分がどれ程情けない事をしたか分かってるんですか?」

冷たくつりあがった目をした彼女の言葉に、男は恐る恐るといったように口を開いた。

「ま……万引き…です」

彼からのその言葉に、彼女は再び冷淡な口調で言った。

「その通り。あなたはこのスーパーで販売していた菓子パンを、会計をせずに外に持ち出そうとしたんです。これは窃盗という名の立派な犯罪ですよ。防犯カメラの映像を見せて、あなたを警察に突き出す事だってできるんですから…」
「いやっ!それは…それだけは勘弁してください。ここで警察沙汰になんてされたら…」

男は警察という言葉に異様に反応し怯え、少女は男のその反応を見て更に苛立ったような表情を浮かべた。

「立場を分かっていないようですね。あなたをどうするか…それを決める権利は私にあるんです。万引きGメンとして、あなたの犯行を現行犯で押さえた私に…」

そう言って腕を組み男の前に仁王立ちになった少女、五十鈴華は相手を見下ろし脅迫じみた言葉を投げかけた。
兼ねてから憧れのバイトだった万引きGメンとして活動を始めてから数ヶ月が経った。初めの頃に比べ慣れてきたこともあり、手際よく反抗の瞬間を押さえられるようになってきた。
これまでの経験上、捉えた相手に甘い顔をしていてはつけ上がらせるだけ。多少威圧的になってでも反省を促さなければならないと考え日々接している。そんな彼女に今回、盗みの瞬間を暴かれたのがこの男性というわけだ。
年齢は三十代後半といったところ。そんな彼からすれば、高校生の華は二回り近く年下の相手ということになる。そんな相手に捕まった挙句ここまで威圧されれば、言葉を失うのも無理はないだろう。肩や背中を小刻みに震わせながら、華による執行の言葉を待っている。

「ど…どうすれば…いいですか?」

震える声でそう言った彼に、華は多少気分を良くしたらしい。口角を少しだけ上げ言葉を紡いだ。

「少しはことの重大さが分かってきたようですね。ですが…まだまだです。万引きなんて卑劣な行為に走るような人ですから、嘘を言っていないという保証なんてありません」