俺はこの村が嫌いだ。
 アホみたいに照りつける日差しの前には、おせっかいな母親が持たせてくれた帽子も意味をなさないようで、頭がゆでだこになりそうなくらいだ。

「あっち~」

 八月の上旬の夏休み真っ盛りだというのに、このクソ田舎で数少ない同年代の男友達の佐々木と梶谷は都会の方に十日間の旅行に行きやがった。小学五年生の夏は一度しかこないんだぞ。
 釣りも虫取りも取り放題だとはしゃげたのも三日と持たず、かといって家にいても宿題しろという親の視線が痛いので何か面白いことでもないかと適当にぶたぶらしているところだ。

「……あら?」
「へ?」

 暑さにたまらずアイスでも買おうと駄菓子屋に寄ると、そこに居たのは真っ白なワンピースを着た少女だった。
 この小さい村の住人はみんな顔見知りみたいなものだが、こんな女は一度たりとも見たことはない。

「あなた、この村の人?」
「お、おお」
「それは良かった。この村の道案内をお願いしてもいいかしら?」
「そのまえに誰だよアンタ」

 その少女は駄菓子屋の婆さんに代金を渡すと、こちらに振り向きアイスを一本差し出してきた。

「自己紹介がまだだったわね。私は葵、おじいちゃんの家に一週間ほど遊びに来たのよ」
「ほー、通りで知らない顔なわけだ」

 二人でアイスを食べながら歩く。そもそも数がいない田舎の芋っぽいクラスメイトとは違い、垢抜けた姿の葵は眩しかった。

「それで、ここらの人って何して遊んでるの? テニスとか?」
「そんなのあるわけないだろ。そうだな……釣りに虫取り、あとは秘密基地作りとかかな」
「秘密基地!?」

 そこまで言ったところで、“まずい”と気づいた。秘密基地の事は佐々木と梶谷との秘密で、他の奴には言わないようにと気を付けていたのに、どうして言ってしまったんだろう。

「私、行ってみたいわ!」

 勿論そんな秘密基地だから、口を滑らせたのはともかく連れていくなどもってのほか。

(そのはずだったんだがなぁ)
「わー、ここが秘密基地ってやつね」

 連れてきてしまった。
 興味深そうに辺りを見渡す葵を見て、何故連れてきてしまったのだろうと自問自答するが答えは出ない。

「お前、女子の癖に秘密基地とか興味あるのな」
「ジョンやレクトも幼少期に秘密基地を作ってましたし、小説で子供は秘密基地を作るものだと思ってましたけど、あなたの周りは違うのかしら?」
「小説? アンタ何歳だよ。あんな文字だらけのもの読むなんて正気じゃないぜ」
「アンタじゃなくて葵よ、自己紹介したじゃない。小学五年生、今年で十一歳よ。あなたも同じくらいじゃない?」

 葵の妙に大人っぽい雰囲気から、てっきり年上かと思っていたが同い年であった。そう思うと途端にさっきから感じていた動機が激しくなったような気がして、気恥ずかしくなって顔尾を逸らした。

「俺だってあなたなんて名前じゃない。敷島(しきじま)だ、……葵と同じ小五だよ」
「あら、同い年だったのね。だったら遠慮する理由もなくなったし、色々見させてもらうわよ」

 こちとら複雑な感情だってのに、葵はガチャガチャと秘密基地のものを漁っていた。都会の方から来たお嬢様って感じなのに、こうしていると随分わんぱくな印象を受けるものだな。
 秘密基地にはどこかから拾ってきたポスターに、椅子っぽい石や手作りのオセロ、そして皆で金を出して買ったり拾ったりしてきた漫画雑誌がいくらか散乱している。
 ……漫画雑誌? 不味い! 

「お、おい! そのあたりはダメだ!」
「こ……これって///」

 気づいた時にはもう遅かった。乱雑に積まれた本を手に取る葵の方に急いで立ち上がって制止しようとしたが、時すでに遅し、葵が地面に広げていた雑誌は傷ついてはいるものの、裸の男女の絵が大半を占める本。……端的に言うとエロ本だった。
 たまたま雨の中で見つけて、秘密基地で干したのを放置していたのが不味かった。

「こ、これは、その……たまたま拾ってだな!?!?」

 わたわたとテンパりながらしどろもどろな言い訳をする俺だったが、クラスの委員長を基本にすれば、女子はT〇loveるでも軽蔑の視線とあるいは暴力が飛んでくる。
 それがエロ本ともなればどうなることやら。何故か葵には嫌われたくないと思って釈明していたが、想像していた非難も軽蔑の視線も感じることはなく。

「その……これって、どういうことをしてるの///」
「へ?」

 顔を真っ赤にしながら薄目でちらちらとエロ本を見ている葵の姿がそこにあった。

「何してるって……そりゃナニだよ。保健体育で習わなかったのか?」
「ば、馬鹿にしないでよ! そりゃそういうことがあるってのは知ってるわよ。でも、どうやってそういうことをするかとか習わないじゃない!」

 そんな真っ赤な顔で凄まれても……。確かに保健体育の教科書じゃ子供ができる仕組みは書いてあっても、その具体的な方法について書いてあった記憶がない。

「そもそも、教科書でも分からないのに本でもモザイクがかかって見えないじゃない!どうせあなたも分からないんでしょう!?」
「そ、そんなことねぇよ!」

 売り言葉に買い言葉。そんなことが思い浮かんだのも柄の間、

「そ、それなら……教えて……みなさいよ」

 薄青色のワンピースの裾をまくりながら話す、葵の言葉で俺の頭は真っ白になった。

「ほー/// これ、こうなってるんだ……」
(女子のアソコ、初めて見た)

 トタン板の屋根を通してほんの少し光量が減った秘密基地で、生まれたままの姿になった俺たちは互いの性器を見つめて息を吞んだ。
 顔を真っ赤にしながらも、俺の股間を興味深そうにのぞき込みながらつんつんと指先でつついてくる。勢いで教えると言ったものの、俺の知識なんてこうして雨ざらしのエロ本を友達同士で笑いながら数冊読んだだけ。

「あっ……」

 それでも葵が見ていたページのように、葵の股間に手を伸ばして触れてみる。日差しで熱くなった肌とはまた違う熱さをもったそこに触れると、ぬるりとし感触が指先に伝わり、びくりと葵の体が小さく跳ねた。
 俺がワレメに指を這わすのを感じた葵は、それに対抗するように痛いほどにたぎる俺の陰茎をおずおずと握った。

「うおっ……」

 じんわりと今まで感じたことのない快感が襲ってきて、不意に視界が葵の股間を見ていた下から上に上がった。それで気づいたのだが、葵は俺の陰茎を握りゆっくりと動かしながら、顔を羞恥に染めて同じく初めての快楽に耐えている姿が見えた。

(もっと見たい)

 その姿を見て、俺の中にもっと快楽に葵の顔を染めてやりたいといたずら心にも似た感情が湧きあがり、葵の秘部にゆっくりと指を挿入した。
 
「ひゃん!?」
「ぬおっ!」

 その行為に驚いたのか、腰から力が抜けた葵がこちらに倒れこみ、俺が下敷きになる形で押し倒された。
 気がつくと、俺の顔の目の前には葵の顔があり、お互いの荒い息遣いすら聞こえるほどの至近距離で、

「……ん」

 俺たちはそのまま唇を重ねていた。
 それをきっかけに葵が陰茎をしごく速度も、俺の指が秘部を探る勢いもヒートアップしていき、

「ひゃ、あぁっ……」
「あっ、アッ!」

 腰が砕けるような快感と共に、俺の陰茎から何かが飛び出し、葵に挿入していた指がきつく締められる。お互い絶頂に達し、力が抜けて息も荒くへたり込む。

「これが……精液なの?」
「初めて出したけど、多分そうだと思う」

 指に着いた精液を弄りながら、こちらに体重を預けていた葵がちらりと目線を横に移し、俺がその目線を辿るとそこにあったのはいつの間にかまた違うページがめくれていたエロ本であった。
 ゴクリと二人とも生唾を飲んだ。そう、葵も気づいているのだろうこれはあくまでも前座に過ぎない。

「……ここか?」
「ん……もう少し下」

 そして、もう俺たちのタガは外れていた。お互いにエロ本から視線を戻し、互いに少しの間見つめ合うと、獣のように交じりあった。

「あっあっあっ!!! これ、指より奥にっ……!」
「ぅっ……出、出る!」

 本では一度出したら萎えると書いてあったが、そんな事はなく俺と葵は何度も体を重ね続けた。
 日が落ち始め、疲れ切っていつの間にか横になっていた俺が目を覚ますとその横に葵の姿は無かった。

「夢、だったのか?」

 まるで夢のような体験で、近くの沢で体を洗ってから帰る道すがらもほわほわとした気持ちであまり覚えていない。
 あれは夏休みにみたつかの間の夢だったのだろうか、それから数日ボーっと過ごしていた俺を𠮟咤する母親から逃げるように、それでいて特に何かする気も起きず、気まぐれに図書館で一日中冷たい麦茶でも飲んで昼寝していようと向ったその先では、

「「あ」」

 肩まで伸びた少し藍色の入った黒髪に、自分とは対照的な白い肌、そしてこのクソ田舎に不釣り合いなほどあか抜けた雰囲気を持った少女がそこにいた。

FIN