「はぁーあ」

物憂げな様子で溜息を漏らす幼馴染が、空の遥か先を見つめていた。

「どうしたの?ジータ」

「ひぇっ!あ、いたの」

「純粋に傷つくから」

「ごめんごめん、わざとなの」

にへらと笑い、悪気もなく軽口を叩く。

「タチ悪いよそれはさらに」

そりゃあ確かに影が薄いけどさ。

「それで、どうしたの?溜息なんかついて」

「テナシーって覚えてる?」

懐かしむようにしながら出された単語は、自分にとっても印象的で覚えていないはずがなかった。

「あぁ……団長代理お願いしたところね」

「そうそう。もう5年も前だけど……あの後どうなったかなぁって」

「行ってみたいの?」

すると彼女の顔がパァっと咲いた。

「いいの!?」

「いいも何も、いつもそうやって寄り道してるんだから。それに」

「それに?」

「ボクは事の顛末だけ聞いてて、町に入ってすらいないから、そりゃ気になるよ」

あの当時、ボクとジータは基本的にどちらかしか外に出なかった。

理由は単純に、グランサイファーを守る役としてどっちかが残っていただけだけれど。

そういえば影が薄くなったのもその辺りだった気がする。一応団長は僕なんだけど……

「命のリンクの距離がわかってすぐだったもんねー」

「そうそう、それでどれくらいまで離れれるかなーって。ジータなら安心して任せられるしね」

「なんたって君の幼馴染だからね!」

ふふん!と胸を張って言うものだから、プルンと弾んでいた。

「……あれ、下着は?」

「君、デリカシーは空の底にでも捨てたの?」

ジトっとした目で僕を睨みながら、両手で胸を隠す。

「夜はつけないのよ。苦しいし」

「そ、そっか。いやつい」

大きく実った果実を隠されて、自分の失言を後悔しつつ話を戻した。

「それでテナシーにはどんな用事で?」

「単純にあのあとどうなったかの視察だよ、スクールアイドルが今どうなってるのか気になって」

「なるほど。ジータはやらないの?」

すると、彼女は1度キョトンとしてから、声を出して笑った。

「あはは、あれは可愛い子がやるんだよ」

「充分可愛いじゃん」

本心だ。ボクの幼馴染は、全空一可愛いとさえ思っている。

「はいはいどうも。実際ステージに立ったこともあるからやれないってこともないんだけどね」

「?じゃあなんで?」

「だって私じゃ彼女たち……μ’sみたいにはなれないから」

5年前の騒動でテナシーにいたスクールアイドル、今や伝説として、立ち寄った他の島でもたまに耳にするほどの人気ぶりだが、しかし本人たちは異世界人で、騒動が収束した際、本来の世界へと戻っている。

「だけど彼女たちが残した文化はまだちゃんと続いてるみたいなの。あのあとAqoursも同じ世界から来てたしね」

「Aqoursも会えてないんだよなぁ……」

「すごかったよ、μ’sもだけど、あっちの世界のスクールアイドルは、こっちの世界から争いをなくせるんじゃないかなってくらいすごい」

何故か自分の事のように語る彼女は、再び胸を揺らしていた。

とはいえこっちの世界に呼び出してるのは星晶獣だし、争いの種として呼んでいるわけだが。

「まぁとにかく、明日行ってみよう」

「うん!あと女の子のおっぱい見すぎだからね!町の人にはくれぐれも失礼のないように!」

鼻歌混じりに部屋に戻る彼女を見送り、一人夜空を見上げる。

バレてたかぁ……