「じゃあわたし、先にシャワー浴びるね」
この一言から、あんなことになるなんて――
自宅のバスルームよりも一回り大きく、ちょうど人間ふたり入っても余裕がある広さ。
(……ラブホテルのお風呂なあ、うちもこんな広さならなあ)
少しばかりずれた感想を抱くのは刑事の佐藤美和子。周囲からマドンナ的な存在でいた(……らしい)が、今は恋人とそういうことをするための場所に訪れている。来る途中に尾行されている気配もあったが、恋人の高木渉が大丈夫と言ったからたぶん大丈夫らしい。あれは居酒屋のキャッチだったのかもしれない、違うものかもしれないが。
女性らしい優美さを備えながら、不断の努力で警察官として鍛えられた体は美しい曲線を描いている。
真面目に職務にあたる性格、凛々しい表情などに魅惑される者は異性にも同性にも多数いるが、この肉体美まで味わえる人物はあまりに希少である。
どすぅぅん!!
(何……やっぱり尾行していたのがわたしたちに恨みのある人物だったとか!?)
シャワー音のするバスルームにいてなお分かるくらいの音と揺れにとっさに飛び出す。びしょ濡れでも気にしない。でも武器防具の代わりになり得るバスタオル一枚だけ掴む。
「高木くん大丈夫!? 何があったの!」
深刻な声と共に確かめると――
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