その日の朝、エマ・ヴェルデは強烈な違和感と共に目を覚ました。
 ふんわりと柔らかなタオルケットの感触に包まれながら、うららかな朝の日差しを浴びる。
 これはいつも通りのことで、何もおかしいことはなかった。
 けれど、やっぱりエマは何かしっくりこない。

(なんだろう……、なんだか妙にさみしい……)

 原因はすぐに知れた。
 本来あるべき温もりが、エマのそばからかき消えていたのだ。

「あれ? 果林ちゃんが、起きてる……?」

 普段であれば、絶対にエマより後に起きるはずの朝香果林の姿が自分の横になかった。
 それどころか、制服をバッチリ身にまとっている。

(制服?)

 エマは横になったまま首を傾げた。
 今日は日曜日で学校は休みだ。
 しかも、同好会の活動もないので制服で出歩く必要はないはずだった。
 だからこそ、昨晩は次の日のことを考えずに、愛し合ったのだ。
 それこそ、果林の乱れっぷりはいつも以上に激しかった。

(昨夜の果林ちゃん……すごかった……)

 エマは思わず顔を赤らめてしまう。
 当然、激しかったのは果林だけではない。
 獣のような声を上げてセックスに興じたのはエマも同じだった。
 そのことを思い出して、どうやら恥ずかしくなったらしい。

「んー、エマ? 起きた」

 身じろぎした音で起きたことに気がついたのだろう、果林が近づいてきた。
 そしてベッドに腰を下ろすと、タオルケットの上からエマの身体を撫でてくる。

(ああー。こういうのいいよねー)

 幸せな気持ちに包まれながら、エマは起きたくないと思ってしまっていた。
 正直、このままずっとこうしていたかった。
 しかし、果林が制服であったことをエマは思い出す。

(果林ちゃん……、何か用があるのかな……)

 渋々ながらエマは起きることにした。
 タオルケットで生まれたままの体を隠すと、上半身をなんとか起こす。
 
「おはよう、果林ちゃん。珍しいね、ちゃんと起きれるなんて」
「まあ、そう、ね。って、言ってなかったかしら? 今日は読モの仕事が入ってるって。……って時間がないからもう行くわね」
「えっ、あっ、うん、いってらっしゃーい」

 そう言うと、果林はバタバタとエマを振り返ることなく部屋を出て行ってしまった。
 見えなくなった果林の背中を思い出しながら、エマを違和感が再び襲う。
 今日の果林は何かがおかしい、そう思うのだが、うまく言葉にできなかった。

「果林ちゃん……、大丈夫だよね」

 エマの小さな呟きは、果林の耳に届くことなくかき消えるのだった。