「なあこーりん。私の処女じゃなくさせてくれよー」

 年下の幼馴染にそう言われたときには泡を吹いて倒れるかと思った。

「話を聞くんだ。私は普通の魔法使いをしているだろう? 同業者とも横の繋がりができたりできなかったりするわけだが、あいつら魔法薬の材料に『処女の血』とか欲しがるんだもん」
「はぁ、それは」

 確かにこの店の品物で言えば、ヒヒイロカネを産むニワトリがいるようなものか。それは欲しいと求められるのもさもありなん、そう森近霖之助は考える。

「処女膜を破損したらいいんだったら、その辺の野菜でも使えばいいんじゃないか?」
「ばっか、男のでなきゃまだ魔力の素材になるんだよ」

 呪術的なものだから物理的な破損だけでは意味がないらしい。言われてみるなら普通の魔法使いらしく箒に毎日跨っているのならそのうち破れているか。
 そのあたり妙に詳しそうなのが引っかかって、店の帳簿(魔理沙に盗まれた商品の分の差し引き計算しなければならないのだ)を眺めて生返事で、

「野菜はもう試したのか?」
「してない!」

 めちゃくちゃムキになって言われて、ようやくまともに向き合う。というか帳簿と顔の間に強引に頭を突っ込まれた。魔法使いのトレードマークの帽子がぽろりと落ちる。

「私だってなあ、そのへんの札束ぶらぶらばぶりー親父に頼んだら処女は頂いてくれるだろうけど、それじゃあ面白くないんだよ。誰がいいかなーって考えていたらこーりんの顔が浮かんだんだってばー」
「そのばぶ……?」
「何か知らないけど幻想入りしてたぞ、偉そうな態度のおっさんが。そのうち迷い込んでくるかもな」

 店に『おっさんお断り』の張り紙でもするか。年齢で区切る方が分かりやすいが、あいにく半妖の店主自身がやけに長生きなせいで話がややこしくなる。定義が難しい。

「霧雨の親父さんに殺されるかもしれないが、ばぶりー親父にみすみす渡してやったら親父さんにしばかれたあげく生きたまま穴に埋められるかもしれないな」

 商品棚からガラス瓶のような見た目のくせにやけに軽い一本を取り出す。中にはどろどろとした液体があって、これは霖之助の『未知のアイテムの名称と用途がわかる程度の能力』によると、性行為のときに使用して女性の苦痛を和らげる用途の『ろーしょん』なる名称だ。液体なのだから飲むか塗るかだろう、塗り薬の類に見えるし、未知の液体をいきなり飲ませるのは危険だから塗る方で使用しよう。

「お、これもこーりんの店の非売品かー?」
「魔理沙の苦痛を和らげるものらしいぞ。おそらくそういう薬だろうが、飲むのだと適量とかも分からないしとりあえず塗って使え」
「はいはーいはーい」

 パチッと軽い音をさせてろーしょんを手に取る魔理沙。